高杉晋作
加賀藩出身(家老横山家の家臣)で維新後は文部省・司法省に出仕した野口之布(ゆきのぶ)もまた、晋作と同時期に昌平黌(しょうへいこう)に在籍した一人だ。後年、特に親交があつかった晋作と芸州藩士星野文平との思い出を回顧している。(永山近彰編『犀陽遺文』明治三十四年)それによると三人は演劇を好み、しばしば黌則を破って観に行った。晋作が最も好んだのは、市川米升(四代目市川小団次)の芸だったという。あるいは三人は、共に酒を飲みに行くこともあった。しかし晋作の酒量は少なく、小杯(おちょこ)三ばいも飲むと、酔ってしまった。晋作は「酒楼が黌から近いと、帰る時に酔いがまだ醒めていないから、その勢いで激論するのが最も痛快だ。もし酒楼が黌から遠かったら、帰るころにはすでに醒めてしまっている」という意味のことを語ったという。あるいは漢学者三島毅(つよし)(中州)の回顧録では、晋作はよく酒を飲みに行ったが、帰ってくると喧噪(けんそう)きわまりなく、粗暴の一少年との印象を持っていたとある。
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